マイルス デイビスの代表作。この曲は、アコースティックピアノでも良く弾く。D Dorianの代表曲でもあるだろう。Dとドミナントの代理Eb。ただ、モードでは、ドミナントモーションは、基本的に無効になる。まぁ、いいか、そんなことは。
このタイトル。日本語に訳すと「だから?」とか「だから、なに?」とか「だからなんなんだ」とか、こんな感じ。マイルスの不敵なイメージにばっちりだ。ベースソロから入るあたりも、本当にいかしている。ビル エバンスのピアノソロパートも、もう、くらくらする。
と、ジャズの名曲をへぼなりに編曲して、とか考えたら、シンセサイザーになった。中盤からのノリは悪くはないと思っています。へぼでノリなし、これがジャズのランキング、いも、さば、ジキコ(乞食)、サラリーマン。これがへぼランキング用語。これでいくと、カテゴリー「サラリーマン」となり、最悪。どうして、こういうランキングなのかは、山下洋輔さんのエッセイをご参照。で、そのサラリーマンの方々へなんの他意もなく、逆恨みというやつ。「ちょっと、イサオ、サラリーマン、やった方がいいんじゃないの」。もし、バンド仲間から、この発言。ジャズ屋にとっては、「致命的」を意味する。だから、逆恨み的ジャズメン用語なので、誤解なきよう。皆、拗ねてんだよ、金ないから。安定した生活に憧れている訳です。
「マイルス」
ジャズの帝王。強面。なんか、ちょっと、簡単にサインなんかお願いできない。
というイメージは、確かにあるけど、俺にはセシル テイラーみたいな「あくの強さ」は感じない。非常に、ニュートラルでグローバリゼーションした、やはり、「音楽家」だったと思う。たぶん、俺の見地は、当たっていると思います。音に出ている。まっ、小柄でハンサムだった。会った事はないけど、ちょっと、お笑いの要素は入れ難いタイプ。ダンディー。俺の師匠の沖至もそうだ。三枚目になり難い。
今回は、ひとみ婆さんは、ちょっと、一休みで、だから、二枚目ブログにする。
「黒髪の女、パリ」
その日、俺は、レアールの著名なジャズクラブOOOに出演していた。久しぶりのクラブの仕事だった。俺の秘書の直子に、大ステージばかりも味気ないから、昔の馴染みのクラブに連絡させたのだ。もちろん、先方の返事はウイに決まっていた。入場料は跳ね上がり、クラブの新記録を更新したらしい。俺には、そんなことは、どうでもいい。
七十席のクラブはぎしぎしだった。立ち見でもというお客が、クラブの外にならんでいたらしい。これに関しては、申し訳ないの一言だ。
一セット目を終わった。もう慣れっこになってしまった拍手。スタンディングオべレーション。
俺は、観客に軽く手を振り、「メルシー」と言った。喉が乾いていた。なんとなく、シャブリの白を飲みたかった。楽屋に篭るのも味気ないと思い、俺は、カウンターへ向かった。拙かった。女たちが、蝿のように集ってきたが、ガードマンにブロックしてもらった。バーマンに、頼む。俺の左側の止まり木。黒いローブを着た黒髪の女がいた。ちょっと、微笑していたが、直接、声は掛けてこなかった。なんとなく、好感を持った。節度はいる。スペイン系かなっと、ちょっと、俺は思ったが、女に不自由はしていないし、面倒はごめんだなっと。俺は、白を一杯口に含み、ベンソンアンドヘッジスのタバコに火を付けた(注 室内は禁煙です。ノンフィクション)。
女の熱い視線を左頬に感じた。知らん顔をしているのも、有名人気取りで嫌だなと思ったので、「ボンソワー」と一言。「とっても、素敵だった」「ありがとう」。ほんの少し、やり取りをした。俺は、シャブリを二杯飲んだ。楽屋の入り口で、直子が二セット目を始めろと合図をしてきた。その時、一瞬、黒髪の女の全体を見た。胸が盛り上がり、腰の括れ、尻へのライン。肉感的な腿から、細い足首へのライン。いかしてるな、こいつのために弾こうと、ステージに上った。なんか、久しぶりに、大ステージと違い、観客が間近にいる。しかも、飛び切りのいい女が。俺は、本当に久しぶりに、ひとりの女のためにピアノを弾いた。新鮮だった。俺は消耗していたのだ。この感触こそ、ジャズの本質なのだと弾きながら思った。
二セット目が終わった。俺は、アンコールには答えない。観客も良く知っている。
真っ直ぐ、楽屋に向かう。女どもが、また、屯してきた。ガードマンに、ちょっと、ウインクして楽屋に消えた。ほんのちょっと、止まり木の女を見た。彼女は、そこにいた。静かに。
直子が、なんとなく不機嫌だった。バーマンに、シャンパンとシャブリを一本ずつ、楽屋に持ってきてもらった。「直子、ありがとう。楽しかったよ、本当」「疲れたろ、お前も、いいよ、先に帰って」。ずっと、不機嫌だった。でも、俺は、なんとなく、久しぶりにパリの夜景でもと思い、諸々の諸手続きは、後でいいからと、直子を楽屋裏から、先に帰した。
マスターへ礼を言いに、ホールに戻ろうとした。
止まり木に、女が座っていた。
俺は、横に掛けた。マスターが少し笑った。「裕さん、お疲れ」「あぁー、ありがとう」
「なにか、飲む?」「マティーニ」「マスター、お願い」「裕さんは?」「あっ、俺、今晩は、ずっと、シャブリだよ」「乾杯」「ありがとう、来てくれて」「うぅーん、素敵だった」「ありがとう」「イサオって、呼んでいい?」「もちろん」「ごめんなさい、怒らないで」「なにを?」
「あたし、ずっと、ファンだった。けど、今日みたいな演奏を聴きたかったの。それだけ。ごめんなさい、生意気言って」「うぅーん、俺がなぜか、一番知ってるよ。名前は」「ジェニファー」「余計なこと聞いていい?」「どうぞ」「スペイン系?」「えー、父が」「やっぱり。綺麗だよ」「ありがとう」。
「マスター、メルシー。諸々は、直子と清算しといて、この飲み代もね」
俺は立ち上がった。ジェニファーも。外に出た。夜風が気持ちいい。俺は、「じゃ」と言ってレアールのパーキングに向かった。二十メートルぐらい歩いて、なんとなく、振り返った。ジェニファーが、ぽつんと、そのまま立っていた。時計の針は、午前0時を過ぎていた。俺は、そのまま立ち止まる。ジェニファーが、泣きそうな顔で走ってきた。愛おしいと、俺は思った。
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