2012年10月12日金曜日

シニアーマン3

やはり、こんなものになるのではなかった。と言っても、俺の意思ではなかったので、仕方がない。単にスーパーマーケットへの出入りが多いということで、俺が選ばれたとしか思えない。俺の近所のスーパーが、その世界への入り口だったのだ。単なるオジギャグで、スーパーマン、はい、その心は、スーパーの従業員。なんて言って、自分だけで受けていたという、イノセントシニアだったのに。

やはり、色々と生活のリズムが変わってしまった。大体、睡眠、食事、排泄etcetcと、半世紀以上、普通にやってきたことが、無効になってしまった。かろうじて、食欲、味覚、性欲は残ったが、前者は、生命維持のために必要といった生物学的な必要性からではなく、単なる習慣として残っただけだ。ぎょ、欲望自体は、性欲しか残らなかったのだぁー。

大体、フリージャズピアニスト(53歳)。こんなおっさんが、今更、スーパーマン化したところで、何の利便性もない。まあ、急いでいる時は、飛んでしまえばいいとか(不慣れとはいえ、パリまでの35km、ゆっくり飛んで十五分)、ピアノの後ろに掃除機を掛けたい、別に片手で持ち上げれば済む。庭の芝刈り。これは趣味だからいいのだが、壁の縁の部分の芝刈りは、中腰、挟みでしんどかったが、今は、十五秒もあれば十分。半日仕事だったのだよ。おっ、結構、役に立ってんじゃん。そうだな、一応はメリットも多々あるのだな。人間、自分勝手で、デメリットばっかり抽出して、しくしく文句を言う。でもなぁー、生活の基本的なリズムと一日の過ごし方。おっさんらしい、ジャズピアニストらしい、この時間の使い方があるでしょって!

たとえば、朝ね、昆布茶を飲んだ後に、盆栽への水遣り、剪定とか。こういうオジサンらしい、ゆったりした時間があるでしょって。これだって、なんぼ、ゆっくりやろうとしたって、ほんの二十秒で終わってしまうのだよ。体のスピードがまったく普通の人と違うのだよ。幸い、ピアノは長年の習慣が残っているから、問題がなかった。助かったよ。

でも、ここがね一番痛い。「練習の必要がなくなった」。だって、世界最高峰のピアニストに、すでに、なってしまっている。隠して小出しにという逆噴射しかないのだ。「日々のささやかな進歩」「ささやかな自負と満足」「三文ピアニストの、だからこそ、そこがご利益」「人間、いくつになっても勉強」「余暇の過ごし方」「定年後の暮らし」「シニアの生活」「ゆとりと音楽」「シニアから始めるバイエル」「果樹の育て方」「シニアの料理。そば打ち編」んなもんが、すべて、削除だよ。つまらんこと、甚だしい。たぶん、マウリッツィオ ポルリーニさんが、ふと、夕日を見ながら、同じようなことを考えたりするんだろうが、俺レベルのピアノ屋は、そんな憂いなんぞ、いらんかったのにぃー。泣き泣き、家泣き子だ。

クドイが、俺の基本要素は、ピアノ、料理、庭仕事と酒、タバコ。お分かりの通り、すべての要素が、ほぼ、ちゃらだ。年相応に、衰え掛けていた性欲。男は、これが衰えると丸くなるし、第一、本人自身が楽だ。高校生の時みたいに、バスのつり革につかまっているだけで、股間がぱんぱんになったり、歩き難いのだよな、町で見かけたお姉さんのタイトスカートのお尻のラインを思い出して、夜な夜な、「あぁーいあい、お猿ぁーるさぁーーんだょーーー」とか、こいつによる弊害も多い。しまいには、ひとりの女を巡って「戦う」のだ、男の子は。で、なくなっちゃうと、楽だよ。大体、ピア中は、前にも書いたが、ヤマハグランドピアノGLXと全裸の別嬪の姉ちゃん。絶対に、ピアノに飛び付く。姉ちゃんには悪いけどな。ピアノは、文句言わない。もう、こっちの思い通りだ。などと言って居るが、一体化、合体ロボ状態になると、ボバリー婦人じゃないけど、ピアノは私だ。ピアノに弾かれている気がする時が、たまに、ある。愛し合っているのだわ。私たち。

大体、高校生のガキは、大の字になって寝ないのだ。木の字だって(小さい声で、だから、これだけ、戻っちゃったの、今更)。そんなことは、どうでもいい。問題は、この夜な夜な、世直しで出動する時の衣装だ。先輩方、スーパーマン、バッドマン、スパイダーマン。と特定化の方向も検討して居るが、毎回違うというのも、ちょっと、捨てがたい。しかも、庶民の代表みたいな感じで行きたいのだよ、俺は。バッドマンは、金持ちだから、色々と小道具がいって、金が掛かり過ぎる。ホンダシビックハッチバック1997に、やはり、そぐう衣装というものがある訳だ。今のところ、やはり、気に入っているのは、ひとみ婆さん。着物は動き難いから、もんぺ版。で、多少、要領を得ない飛び方も、これだと、ご愛嬌になる。

相変わらず、談志師匠みたいに、前口上が長いが、要は、一日が長過ぎるのだよ、スーパーマンには。だから、世直しで、あっちこっち飛び回らんと、一日が長い。休憩もいらないから、誠に長い。ただね。こっちも生活があるから、ピアノを止める訳にはいかない。では、消防署員になるってのはどう?でもな、フランス、勤務時間とかうるさいし、残業しないから、俺とすれば、弊害も出る。「えっ、遠くで叫び声?五時五分前ですから、今、出動すると勤務超過ですが?シェフ」とかなってしまうな。「いやぁー、私だって、家庭が第一です」。だったら、スーパーマンだなんて名乗るな、馬鹿、となる。それじゃ、いっそのことホランド大統領に頼んで、国家保安員とかにしてもらおうかしらね。大統領と同じぐらいの給料もらえるかも。衣装代なんかも。いやいや、仰々しいし、庶民生活が台無しだ。ピアノもちゃらになるよなぁー。やはり、初期のゼブラーマンぐらいが、いい感じ(ローラ)。

ところで、新聞見てたら、「ミドルウーマン、現る」。
なんだなんだ、どうも、四十前後のおば様。写真見たら、ちょっと、シックなワンダーウーマン。
格好のいいのなんの。すげぇー、プロポーションだっ。なにもの?

つづく(かも)

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