2012年10月15日月曜日

シニアーマン4

「もしもし」、俺は、送信してみた。「はい」。日本語だ。「ミドルウーマンさんですか?」「はい」。「ありゃ、日本人なの?」「いいえ、フランス人です」「ありゃ?ありゃありゃ。で、あんたも?」「はい、三日前に」「スーパーの買出し、好きだったんだ?」「はい」「俺と一緒だ。困ってんだろう?」「はい.....」。

俺以外に、もうひとり、スーパーウーマンが誕生してしまった。逆に、続々と登場してもらうと、こっちも助かるのだけれど。それが、普通になっちゃえば、隠す苦労がなくなる。けど、世界経済とかは、どうなっちゃうのだろうね?

皆、スーパーマンとスーパーウーマンになってしまうと、たとえば、日本の国技の相撲とかは、どうなっちゃうのかしらね?勝ち負けなくなっちゃう。早過ぎて見えねぇーし。

考えたら、スポーツは全滅だ。そもそも、心と体を鍛える。これ自体がなくなってしまう。

「野球」

「五回表、打順は、四番落合からですが、いゃー、張本さん、今年の北別府は調子がいいですねぇー」「あー、大きく振りかぶり、初球」ずばっ。「おー、2221kmを記録致しましたぁー」「さすがの落合も、手が出なかったですねぇー、張本さん」「いや、初球。様子見でしょう」「さあ、第二投」ずばっ。「張本さん、今のはカーブですかね。1887kmとの表示が出て居ります」「まあ、打ち気を誘うスローカーブでしょうね」「落合、見逃しました。追い込まれましたぁー、中日、落合」「おっ、落合、バントの構え。第三球目。あっ、大きい大きい、ホームランかぁー、さすが落合」。球は、中日球場から、岩手県の千厩まで飛んで行った。

球、見えない。ベースランニング、見えない。全部、ホームランか三振。このふたつしかなくなってしまう。

「サッカー」

「いやぁー、釜本さん、今の中田のゴールですが、ポールがへし折れましたね。これでは、さすがの川口も、ちょっと」「いやぁー、今期の中田からすれば、ゴール自体をイタリアまで飛ばすぐらい、どうってことないでしょうね」「しかし、川口も、良く、ここまでセーブ致しました。ゴール圏のシュートが、これで、本試合、1892本目でしたからねぇー」

バスケットの点数みたいになるか、ゴールキーパーも半端じゃねぇーから、全試合ゼロ点か、どっちかだ。

「卓球、テニス」

「愛ちゃん、がんばってますねぇー」
延々と、応酬しているだけ。こんなもん、だれが見るのって!
大体、玉も動きも見えない応酬だよ。シュールだっ!

「水泳」

「鈴木大地、飛び込みました。ゴールイン」
水面の漣しか見えないし、勝敗がない。

「マラソン」

「アベベ、ゆっくりとスタート。一服、しましょう。はい、記録は、五分三十二秒」
種目として成り立たない。

でも、引越屋さんなんかは助かると思ったら、職業として成り立たない、考えたら。

「ちょっと、そこのピアノ持ってきて」「へっ」二秒後には、そこにある。
「俺、縦列駐車だめなんよ」別に、道の真ん中に止めて、ちょっと、「よっ」て、指ではじけばお仕舞いだ。お家の日照問題なんかもなくなってしまう。ビルごと、移動されちゃう。で、いじめなんかもなくなる。いじめようがないでしょって。それはそれで良いことだわな。飛行機会社もいらなくなっちゃうしな。「ちょっと、この書類、メルボルンまで持って行って頂戴」「へえっ」部下が、オフィスの窓から飛んで行っちゃう。仕事ははかどるどころか、朝九時出社で九時十五分には、皆、終わってる。飲み屋もなくなっちゃう。酒、タバコ関係も全滅。

では、なにが残るのだ。衣類はいるわな。食べ物は、なくても良くなっちゃうから、コンビ二なくなっちゃうな。あれっ、考えたら車いらない。交通機関自体がいらない。二酸化炭素はなくなって良いことだけど、皆で、飛び回って、地球のオゾン層は大丈夫なのかな?そうか、なんも排出しないから、いいのか、それは。ということは、地球にはやさしいよね。大体、暴力沙汰とか、諸々の犯罪もなくなっちゃう。スーパーマンの家に、スーパーマンの「こそ泥」。そんなこたぁーねえだろうって。空中衝突、大丈夫かな?横断歩道とか信号とか、空に浮かべないといけないよなぁー。

お家と衣類だけなの、必要なのって。じゃ、これ関係だけだ、産業で残るのは。でも、人類全体、この業界で仕事するわけ。無理があるな。それも。じゃ、芸術、芸能だね。

考えたら、そうなると世直しもなくなっちゃうから、皆、相当、暇になっちゃうよな。
やっぱ、暇潰しは、芸術、芸能だけじゃん。ジャズピアノとか。

でも、皆、めちゃくちゃ上手いから、だれも、聴きに来たりはしないよな。

早くプロット決めて、書けって!
作者が紙上で、どうしようかぐずぐず。早ょーせいって!
わぁちゃー!

はい、
俺は、シニアーマンなので、同類を探知できる。今のところ、残念ながら、彼女だけだ。やはり、そうしないと、先に進めない。皆一緒だと、なにもかも成り立たない。

俺とまったく同じで、三日前の朝に異変に気が付いたらしい。で、やはり、ちょっともじもじ悩みつつ、正義感と良心に追い立てられ、サロンの窓から飛び立ってしまったそうだ。名前は、二コル。三十八歳。いつの間にか、婚期を逃したオールドミスと、自分で言っていた。日本語は、三日前までは、まったく話せなかったそうだ。

近々、お会いしましょうねって言って、その日は交信を打ち切った。文字通り、飛んで行けば、すぐにお会いできるのだが。

前から不思議に思っていた。婚期を逃したオールドミスに、飛び切りの美女が多い。あんまり、綺麗なのも、男どもには、とっつき難いのかしらね?確かに、家の中に、パメラ アンダーソンみたいのがうろつかれると、日常が破綻してしまう。なにも、アレ以外は、手に付かなくなるし、たぶん、顔はどんどんお猿さん顔になってしまうだろう。会社に行く気なんか起きないし、上司の説教なんか耳に入るわけがない。鼻の下が、だらぁーーーん、目はべズリー。股間は木の字。俺のケースだと、ピアノが弾き難いことはなはだしいし、大体、コンサートは、全部、キャンセルだわな。

いったいなんの話を書いてるの、あなたは?
えっ、俺のこと?

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