トランペッター、沖至(おきいたる)。俺のジャズの師匠である。
で、師匠というのは、その道だけではなく、当然、人生の師匠でもある。
俺の師匠は、大変にダンディー。
絶対に、他のミュージッシャンのことを悪く言わない。
これは、恐ろしいぐらい凄い。
チンピラは、すぐ、あいつがどうの、あのギターはどうの、とりわけ、同じ楽器の奴のことは、ぼろくそ。これこそが、チンピラと呼ばれる由縁なのだ。師匠は、そんなことはしない。
ただし、ドラムス、佐藤真師匠に、先日、言われた。「イサオ君、悪口ゆぅーとさっ、結局、自分に、跳ね返ってこない?」。どきっ。もっとだな、ぐさっ、だ。師匠連は怖いどぉー。
下ネタ話も、一切、しない。もてもてなのに。
チンピラは、一通り、仲間の悪口。その後は、下ネタ。
だから、チンピラなのだ。あれっ、真師匠は、よくするなぁー?ぎゃ。書いちまったよぉー。ヤバイな。
で、俺は、酔った勢いで暴れたりする。昔ね。言っとくけど。
師匠は、絶対に、そんなことはしない。いつも、穏やかである。
俺はしないけど、仲間の一部は、お客様と喧嘩したりする。拙い。確かに。
荒くれどもの集団と、思われてしまう。これでは、師匠に申し訳ない。
チンピラは、やはり、この程度なのである。
師匠は、俺のことも、絶対に、悪く言わない。
自己顕示欲の塊、ナルシスト、超絶自己中、嫉妬深い、エエカッコシー、暴力的に熱い、こう言った、天災系のミュージッシャンなのに、悪く言わない。良いとこしか、言わない。
これって、非行少年教育に役立つはずだ。本当。
良いとこをふたつ。別れ際に、チクッと、一言。刑事コロンボだっ!
「うーーーん、イサオは、ね、弾いてる姿が、いいなぁ」
「えっ、姿だけですか?」
「うーーーん、姿がいいのは、音もいいってことだよ」
「ありがとうございますっ!」
「うーーーん、イサオの音は、うーーーん、一言でいうとさぁ、重い、ね」
「タッチが、ギンギンだからでしょうね」
「いや、そういう意味じゃ、ないんだけど、重いよ、イサオは、なぁー」
と、褒められているような気も、一瞬するのだ。
でも、帰り際に、ぽそっ、
「イサオ、ちょっと、和声、やってみぃー、楽だよ、お前自身が、な」
なんてことを、おっしゃるのだ。
やはり、師匠を舐めては、いかんぜぇー、お若いの。
でも、踏み台にしないと、一生、弟子だぜって!
師匠に、深謝。
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