時は、西暦2033年。
世界庁が人工太陽の打ち上げに成功したのが、2030年だから三年後。
着流しの裕先生、御年七十四歳。一年前まで、相変わらずのしがないピアノ弾きだった。
ところがぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、
裕先生の小説「夜の果て」、これがベーベル文学賞を受賞した。
ついでに、同名曲の収録されたCDが、レディーババァを抜いて世界ミリオンセラー。
フリージャズの快挙。深海魚。裕先生の年収は二兆円ぐらいと噂されている。
人工太陽が作動し始めた時、人類は狂喜していたのであるが、裕先生はにがにがしい思いがむらむら。それを本にしたら、当たったという構図。
だってね、いわゆる日中、これは前の通りなんだけれど、太陽の裏側になる部分に人工太陽が回っているでしょ。つまり、夜がなくなっちゃたわけ。午前と午後の区別が付かない。時計も、分かり難いから、二十四時間のそれに変わった。こうなると、ワークホリックのマンサラの野郎なんて、間違えて、一日、二回出社したり、朝食と夕食の区別がずれ込んでくると分からん。「なんだよぉー、朝から、すきやきかよぉー」「お父さん、今、夜の八時ですけど」とか、わけが分からない。夜中の十二時に「昼飯は」なんていう奴がでてくる。そりゃー、夏なんてカンカン照りだから、そうなる。もう、面倒だから、午前午後は止めにして、九時五時を二回やればいいんじゃないっとなった。八百万人ぐらいが過労死した。で、止めた。
で、着流しの裕先生の職場はジャズクラブ。出勤は夜の九時。朝日が昇った感じの夜の九時。
なんか、ジャズする感じにならんから、お客様激減。朝の九時から酒飲んでジャズ。俺だってやだぁーーー。営業妨害はなはだしい。朝の九時からナオンを口説くかっての! 性欲異常だ。
うで、この怒りを書籍化したら、先記のようになった。
「おい、マミ、今、何時?」
「八時」
「どっちの? 午前なの午後なの?」
「忘れた」
「おまぁー、馬鹿じゃねぇーの。今日は何日なんだよって?」
「二日と三日の間ぐらいなんじゃないの」
「んじゃ、これ夕飯なの」
「たぶん」
「のりと納豆と味噌汁って、俺がガキの頃は、朝食だったんだけど」
「つべこべ言わないでよっ。今日、仕事でしょ。急いでると思ったから、ささぁと作ったの」
「仕事? えっ、今朝、コンサートなの?」
「お父さん、なにぼけてんのよぉー、今は、昔、お父さんが若い頃、夜とか言ってた時間なの」
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