裕イサオ、当時、五十三歳は、突然、五十半ばにしてスーパーマンになってしまった。
いつものような、いつもの朝。いつものようにカフェオレとベンソンの煙草。そして、いつものように二階の風呂場へ。歯を磨き、顔を洗う。その後、鏡に向かってニッとする。
あれ? あれあれあれあれあれぇ?
芸能人のような白い歯。崩れ掛けていた顎の線が、妙にくっきり。
あっ、Tシャツの袖。いつもならガハガハの隙間だらけなのに、腕の太さがTシャツの袖の太さを上回っているらしく、ビシィー。あっ、胸筋が盛り上がっている。慌てて上半身裸になる。全体によたっと前屈み、透けたあばら骨、やや、だらしなく弛んでいる腹部等々の見慣れた姿がない。ないないないないない。盛り上がった胸の筋肉、ゴムタイヤのように、もこもこした腹筋。太い腕。よぉーーーく見ると、首の太さが顔の幅と同じだ。
と、冴えないオヤジがいきなりこれだ。
試しにピアノを弾いてみたら、なぜか、ストラビンスキーの春の祭典をちゃらちゃらと弾いてしまった。おわぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
地道な練習が生甲斐だったのによぉー、余計なことすんなぁーーーーー、おいおいおいおいおい。空も飛べちゃう。今更よぉーーー、余計なことを.....。
参ったねぇー、このスーパーマン化、仲間にばれるとヤバイから、超絶テクをひた隠し。
なんとか、コンサートをこなす毎日。
遠くで悲鳴が聞こえると、あっというまに空を飛んで助けに行ってしまう。
もともと根が善良だから、どうにもならんのだ。これじゃ、余生の人生設計が変わってしまう。
ブログ、ショートショートを書いて、地道にピアノの進歩。なろぉーーー、どうしてくれるぅー!
と、諸々は「シニアーマン1.2.3」を読んで頂戴ね。
とうとう、映画会社ナーナーブラザースから、次期バットマン映画の仮面を付けている部分の代役依頼。出演料二億円っ! ニーソピクチャーズからスパイダーマン。三億円。ジェームズキャラメル監督から、ターミネーター5の悪役、覆面ロボット役、十億円。と、素性がばれない役の依頼がぞくぞくのぞくぞく。考えたら特撮しなくていいから安上がりだし、本物だから、映像の迫力が違うというか、自然というか.....。
と、一躍、ハリウッドの大スターになっちゃったっ!
うもぉーーー、余計なことしてくれたよなぁー、ったく。
金ばっか溜まっちまっても、楽しみがなくなっちまっただべって!
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